サイトへ戻る

Interview.01 Yoshinori Okada 

絵は記号化した言葉。

見えているものを描く。それがすべて。

岡田嘉則(画家)

· interview

えのいちでは、“伝える”ことを大切にする場所でありたいという想いのもと、イベント開催時、主催される方々を取材し、インタビュー記事として掲載させていただくことにいたしました。

今回は、記念すべきその第一弾。

2019年1月20日に「江ノ島絵巻」展を開催いただいた画家・岡田嘉則さんを取材しました。江ノ島絵巻のお話を中心に、画家として大切にされていることなどをお伺いしました。

broken image

<profile>

おかだよしのり◎1954年東京生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒。1992年に茅ヶ崎に移住後、市民ギャラリーでの個展開催や、ハワイの穏やかな海岸の日常を描いた初期の作品が湘南祭ポスターに採用されるなど、地域との関わりも深い。具象画、アクリル画、絵画、イラストレーション、壁画、出版等幅広いジャンルで活動し、近年は、和をテーマに、絵巻物、仏画、写仏、蒔絵等を制作している。

―現在、作品の展示会やワークショップ、商業施設やカフェの壁画のお仕事など幅広く活動をされていますが、絵を仕事にすると考え始めたのはいつごろだったのでしょうか。

岡田 幼いころから絵が好きで、大学では油絵科に進学しました。学生時代から、出版社からご依頼いただいて挿絵を描くなど、絵を仕事にしていたので、卒業後も、絵を描く以外の仕事を考えたことはありませんでしたね。

卒業後しばらくは、店舗のディスプレイの仕事などをしていて、一度会社を興したこともありました。しかし、バブル時代の終わりとともに下火になり、そこから画商についてもらい、画家としての活動が始まりました。

―当時から、今回展示いただいた「江ノ島絵巻」のような日本の歴史的な風景を描かれていたのでしょうか?

岡田 昔はハワイの絵を描くのが好きでした。明るい陽射しで、暖かくて、楽しい感じ。アメリカの、身軽さというか、軽い感じのノリがカッコよくて、好きだったんですよね。

当時、私の絵を見た方から、「写真だと思っていた」と言われたことがありました。私としては、写真のように描きたかったわけではなく、見えた景色そのままを描いていただけのつもりでした。その言葉を聞いて、せっかく写真とは違うものなのだから、その違いがわからなければ絵である意味はないんじゃないかと思う気持ちもありました。

broken image

―写実的というか、見えるものそのままを描いていたんですね。そこから、今回展示いただいた「江ノ島絵巻」は少し描き方が異なるように思いますが、どういった変化があったのでしょうか。

岡田 時代の流れとともに当時ついてくださっていた画商が次々なくなってしまって、会社員になったんです。ある企業で、社長直下の企画・デザイン担当に就職しました。そのとき、東海道五十三次風の広告をつくる、というプロジェクトで、浮世絵風のイラストを描きました。それがきっかけです。

―江ノ島の風景や、江ノ島の古今を題材にした「江ノ島絵巻」を描き始めたきっかけは、なんだったのでしょうか。

岡田 自転車で海沿いを走っていた時、江の島がくっきり、鮮やかに、神々しく見えたんです。その瞬間、それを克明に残したいと思いました。

江ノ島神社に続く参道を描いていた時、たまたま、着物の方が歩いていたんです。その時ふと、「ここに江戸時代の人も住んでいたかもしれない。いま、同じところを歩いているんだ」と、今と昔がつながる感じがしました。それで、この絵は、江戸時代の人を主役にしたほうがいいのではないかと。

broken image

―「江ノ島絵巻」は、同じ題材で屏風でも描かれていますよね。そちらには、竜宮城でおなじみの小田急・片瀬江ノ島駅も描かれています。

岡田 そうですね。それは何かというと、「江戸時代の人から見た未来の建物」というテーマです。制作にあたっては、アクリル絵の具を使ったように描きたかった。なぜかというと、昔の人にとっては、それが一番手っ取り早い画材だからです。画材は、その時代にあった技術でつくっているものなので、江戸時代の人がこの絵を描くとしたら、アクリル絵の具なんですよ。

―最後に、岡田さんがこれから描きたいものはありますか?

岡田 「描きたい」と思うのは、いつでも衝動なんです。その衝動は、じっとしているだけでは出てきません。歩いているときにぽっと出てきたりするんですよね。

強いて言えば、画家としては複雑なものを描いてみたい。どうなっているかわからない、入り組んだ木の枝とか(笑)苦手なのは、同じものを2枚以上描くことですね(笑)

アトリエキッチン鎌倉というレンタルスペースでイラストのワークショップを定期的に行っているのですが、複数の人が同じものを見ながらスケッチしたとしても、完成したものは全て異なっています。それは面白いですね。見えたままを描いたとしても、一人ひとり見えている世界は違う。

絵は、記号化した言葉だと思います。画家は、絵で表現するべきで、いくら御託を並べても仕方がない。だからこそ、私は「嘘を描く」ことはしたくありません。見えているそのままを描くこと。その信条で、これからも描き続けたいですね。

broken image

(取材:もりおかゆか/撮影:岩井田優) 

<今後の予定>

【ワークショップ】2月22日(金)10:00~13:00 フードイラスト&アトリエランチ@アトリエキッチン鎌倉

<関連情報>

※岡田嘉則さんの個展は、今後もえのいちにて開催を予定しています。決定次第、えのいちFacebook・HPにて告知いたします。